メッセージ
「障がい者が普通の場所で普通に暮らす」ことを意味しています。
この方向性は、日本でも目指すべき社会の形として注目されつつあります。
映画『幸せの太鼓を響かせて~インクルージョンINCLUSION~』では、入所施設を出て地域社会で暮らすことをいち早く始めた知的障がいのある人々の生活を追いました。主人公は瑞宝太鼓という障がいのあるプロの和太鼓奏者6名です。
ふつうの場所で、愛する人との暮らしを…。この思いから1978年(昭和53年)に活動がスタートした通称コロニー雲仙で彼らは暮らしています。コンクリート建ての立派な施設に暮らすよりも一番愛する人の居る場所で暮らすことを望み、それぞれが民間のアパートや民家を借り、太鼓打ちという仕事を持ち、そこから収入を得て、ごく普通の地域社会で暮らし始めた人たちです。彼らは、太鼓奏者としてさまざまなイベントや、全国の少年院などで数多くの演奏を行ってきました。演奏をすることで人に喜びを感じてもらえることを目指し、激しい練習を繰り返す中で、素晴らしい演奏者としてまた社会の一人として著しい成長をしてきました。団長である岩本さん(34歳)は、6年前に結婚し、4歳の子供を育てる日々を送っています。そして、十数年前にリハビリ的なクラブ活動として始まった太鼓演奏活動は、海外へも活躍の場を広げているのです。
この映画では世界的な和太鼓奏者で太皷表現師の時勝矢一路氏の作曲による新曲を氏の指導を受けながら挑み、映画の終章でそのすばらしい演奏を披露します。
障がい者が普通の場所で普通に暮らす」その姿を綴る中で、これからの社会のあるべき姿、未来の可能性を見つめることができればとの願いから製作いたしました。
映画監督 小栗 謙一
1991年に初めてスペシャルオリンピックス(以下SO)に出会って以来、知的障がいのある方達との交流や貴重な数々の体験により、私の人生は大変豊かで味わい深いものとなりました。スポーツ活動を通して、彼らの自立や社会参加を支援するSOを全国に広め、世界大会を日本で開催することを念願とし、ひたすら邁進してまいりました。ホッと一息ついた今、周囲を見渡しますと彼らの自立と社会参加は殆ど進んでいません。未だに国民の8割が障がい者に無関心であり、無理解と偏見は両者の間に見えない壁をつくっています。一方、欧米諸国はノーマライゼーションの時代からインクルージョン時代へと進み、障がい者の社会参加が当たり前と考える国民が過半数を超えています。インクルージョン社会(包みこむ共存共生社会)の素晴らしさは、お互いの違いを認め、「皆が大切な存在」と実感できる世の中で、実は誰にとっても幸せな社会であると確信しております。
日本のインクルージョン社会を目指す活動を進めている中で、一昨年縁あって長崎県のコロニー雲仙を訪問する機会がありました。そこには障がい者が生き生きと自立し暮らしている街の風景がありました。30年かけて創造した理想的なインクルージョン社会があったのです。ここに暮らしている人々のありのままの姿を日本中の皆さまに知らせたいという私の熱い思いは小栗謙一監督に伝わり、再びご一緒に映画の製作を決意しました。
"住み慣れたふるさとで暮らしたい"、"愛する人と生活したい"こんな当り前の生活をあらゆる立場の人々が共存共生の思いやりで作りあげているということを知ることは、多くの人々の生きる勇気や支えとなることと思います。又、撮影スタッフの一員となるビリーブクルーの成長や活躍ぶりも非常に楽しみです。
助け合いの地域社会の復活にこの映画が少しでも寄与できますことを願いつつ、皆さまのご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。
製作総指揮 細川 佳代子