はじめに
2005年2月。世界中のメディアが長野に集まった。そこに9人のBelieveクルーの姿もあった。知的発達障がいのある人たちを撮影したドキュメンタリーはこれまでにも数々あった。でも、彼ら自身が、カメラを扱い、マイクを片手にインタビューをし、記録するとしたら? 信じられないかもしれない。しかし、9人のBelieve撮影クルーは、それをやり遂げた。知的発達障がいのある人たちのスポーツの祭典が長野で開催された2005年2月。彼らは自分の目で世界を見て、自分の言葉で世界を伝えた。本作は、彼らがそこにいたるまでの道のりを記録し、彼ら自身が撮影した記録映像とともに、ひとつの映画となって誕生した。
『Believe』(ビリーブ)文部科学省選定
2005年/日本映画/35mm/color/ビスタサイズ1:1.85 /DTSステレオ /109分
監督・製作:小栗 謙一製作総指揮:細川 佳代子
able映画製作委員会代表:近衞 甯子
撮影:赤平 勉 K.P.Marron
音楽:小林 研一郎
ナレーター:滝田 栄
ラインプロデューサー/助監督:花井ひろみ
Believeクルー:勝又 由貴/川口 弘樹/下池 健一/平山 浩二/前原 えりか/増満 伸朗/宮崎 亮太/渡辺 元/和田 勇人
スペシャルゲスト:岩崎 恭子/牛山 奈穂美/続 素美代/阿部 恵/小錦 千恵/KONISHIKI(敬称略 順不同)
協力:2005スペシャルオリンピックス冬季世界大会・長野/SO日本/ SOI/ SORI/ SOアメリカ/ Panasonic/KONICA MINOLTA/FUJINON/GOLDWIN/株式会社スリーボンド/Amway/ 日産労連/日産レンタカー/IMAGICA/アオイスタジオ/SMOKY STUDIO/
協賛:arting/Panasonic/銀座ステファニー化粧品/
able映画製作委員会へ寄付をお寄せくださったすべての人々
支援:文化庁
配給:ableの会
配給協力:イメージフォーラム
宣伝:ムヴィオラ
制作:Directors System able映画製作委員会
監督からのメッセージ
“いっしょに映画をつくりたい!”この思いが、本作品の動機である。私は『エイブル』そして『ホストタウン』という2つのドキュメンタリー映画において、知的発達障がいのある人々の可能性をみつめてきた。その製作過程の中で私は常に信じ続けてきたことがある。それは、“彼らはできないのではない。できないだろう、無理だろうと思い込んだ社会ができなくさせているのだ。”ということである。私のこの気持ちを支えてくれるように、これまでの映画の中に登場した人々は“できない”という概念を超越したメッセージをくれた。
しかし私の中には、あるわだかまりが残っていた。それは、自分自身への問いである。彼らを信じるというなら、私は彼らに道を開いているだろうか? 彼らを被写体として見つめるだけでなく、なぜ彼らとともに映画をつくらないのか? 自らが問われる事となった。こうして、彼らが自らの目で捉え、私たちはサポートしながらもう1台のカメラで見つめるという本映画『ビリーブ』のかたちが生まれた。しかも千載一遇、映画の舞台となる題材が、アジアで初めて開催されるスペシャルオリンピックス冬季世界大会・長野なのである。
もともと、障がいのある人々が撮影クルーとなる構想は今回の映画の為に生まれたものではない。私は1999年、ノースカロライナで行われたスペシャルオリンピックス夏季世界大会で “スペシャルオリンピックス・ロードアイランド・マガジン”という知的発達障がいのあるTVクルーと出会った。彼らは競技会や、アスリート達へのインタビューにスタジオ収録を加え、月1回30分番組を製作している。勿論彼らをサポートする社会があった。アメリカのパブリック・アクセスチャンネルCOXコミュニケーションというTV局が協力し、この番組は1994年から現在も続けられている。
この時の出会いから6年の時間をかけて今回の企画が実現する事になった。9人のクルーはコーチングスタッフのもとで半年にわたる撮影勉強会を経て2005年2月26日に始まったスペシャルオリンピックス世界大会でメディアの仲間入りをし、映画を撮り終えた 。